日本獣医師会雑誌より

地方会だより

青森県獣医師会における食鳥検査事業

相馬寛生(青森県獣医師会常任理事・事務局長(当時))
 
  平成2年6月に「食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律(以下,「法」という.)」が公布され,平成3年3月には法に伴う政省令が施行された.これに伴って全国16の公益法人等が厚生省から法に基づく食鳥指定検査機関として指定され,平成4年4月から民間団体による食鳥検査事業が開始されている.
 民間団体に移行した食鳥検査は,各検査機関,検査員の努力もあって食鳥肉衛生上大きなトラブルもなく経過し,現在に至っている.
 本会においてもこの時期に他県同様,県当局と食鳥検査事業について話し合いがもたれたが断念している.この間の詳しい事情については語られていない.この経過があったことから,今回の指定検査機関に係る申請の意思表示をした段階では目に見えない大きな障害であったと感じられている.
 青森県の食鳥肉生産は,おおむね37百万羽で岩手県に次いで全国第4位の地位を占める大きな産業である.このことから青森県当局が実施している食鳥検査システムについては,生産者団体から休日検査を含め年間検査日数の延長及び検査時間の弾力的運用等についての問題が常在化し,その改善が強く要請されてきた.
 本会に対しては,平成9年に青森県食鳥生産協議会,青森県食鳥事業推進協議会等から食鳥検査事業に取り組まれるよう要請書が出されている.
 本会としても内部検討を重ねたところ,規制緩和の推進及び民間活力活用の趣旨から食鳥検査事業に取り組むことは,時宜を得たものであり必要な条件(要約)も次のとおり整備可能であると考えた.
 [1]獣医師の確保は容易である.[2]精密検査員を配置し検査技術の正確性,公正化を確保できる.[3]消費動向に対応した効率的,弾力的な検査対応が可能である.[4]6カ所の食鳥処理場は八戸市を中心に稼働している.[5]本県産業の振興に寄与できる.[6]県行政の推進に貢献できる等のことから前澤田 啓会長の決断もあって,平成14年度事業開始を目標としての方向性が打ち出された.そこで,先発した各県の実情調査等の具体的な行動を開始した.平行して食鳥処理場からみて中心地となる八戸市に食鳥検査センターを建設することにし,平成11年8月に臨時総会を開催して,建設用地856m2を確保した.多少地形的に難のある土地であるが格安の価格であった.
 建設用地を確保できたことから食鳥検査センターの建設が順調にみられたがつまずきもあって,平成12年度には理事会を連続して2度開催し意見の集約を図ったこともあった.五里霧中の中で検査センターが平成13年に完成した.しかし,東北厚生局担当官の現地調査では,微生物検査室の外に病理・生化学検査室の設置が必要であるとの指摘があった.このため急遽,会議室を改造することにしたが,割り切れない思いがあった.
 前会長はこの事態を受け止めて強力な指導力を発揮した.その結果,平成14年度の事業開始は時間的に制約があること等から,平成15年度事業開始に向けた工程表を作成することができた.強力なバックアップ体制を得て申請事務の進行はおおむね日程表どおりで進め,その後も東北厚生局担当官の2〜3度にわたる現地指導を受けたが,その都度手直し工事等があった.この検査室の整備や器具機械については金融機関のリースを活用することで平成14年度でおおむね整備することができた.リース以外の財源は,金融機関からの融資と本会の財政調整基金の取り崩しと,本会一般会計等からの繰り入れで間に合わせた.
 申請事務と平行して進めた食鳥検査員の確保については,会員の有資格者全員に対し説明会を開催したところ予想以上の参加者があった.検査員の資格は本会会員に限定したことから若い入会者が増加した.検査員希望者については平成15年3月までに本会が主催した4回の集合研修会と食鳥処理場での現場研修会には個人ごとに10日間行ったがすべて自費参加し,検査業務の習得に汗を流した.ただ,集計に利用するパソコンに不慣れな検査員がいた等の問題があった.
 平成14年12月19日に指定申請書を青森県を経由して東北厚生局に提出し,平成15年1月9日に青森県健康福祉部職員の立会のもとに東北厚生局担当官4名による現地調査,ヒアリングを終えた.
 平成15年3月17日に青森県健康福祉部担当者から,3月14日付けで全国17番目の指定検査機関として官報に登載された旨の連絡を受けた.正式には,青森県知事経由で平成15年3月14日付けで厚生労働大臣から「法」第21条第1項の規定により当該規定の食鳥検査を行う者として指定書を交付された.同年3月17日付けで青森県知事から「法」第21条の規定により,「法」第15条第1項から第3項までに規定する食鳥検査の業務を4月1日から開始することでの事務委任の通知があった.
 前会長とともに走りに走った数年間であったが,検査開始までの時間を考えると感傷に浸っている暇はなかった.
 食鳥検査に従事する検査員27名については,4月1日からの事業開始に伴って事業開始前の3月28日に辞令交付式を行って,意識の高揚を図った.
 平成15年3月31日にはそれぞれの食鳥処理場現場において,翌日から検査業務に直接従事する検査員が青森県職員から事務引継ぎを受けた.
 平成15年4月1日から青森県内6食鳥処理場において本会による食鳥検査業務がスタートした.その検査概要は表1のとおりである.
 (社)青森県獣医師会食鳥検査センターの組織図は図1のとおりであるが,特徴的なことは食鳥検査センターは八戸市に設置し,検査室を主体に食鳥検査業務を行っていること,センターには所長あるいは次長が常勤として勤務し,食鳥検査業務を統括していること,一方,事務室は青森市の本会事務局が担当し事務処理を行っていることである.約100kmの距離ではあるが,常に連携を密にして距離感を感じていない.
 食鳥検査事業の対応については,ある程度の見通しは持てていたが,大きな不安材料は,検査員の主力になる会員が組織の経験がないことであった.早く組織になじんでくれるだろうかと心配したが,現在のところは杞憂に過ぎなかった.目下のところ,検査員の懸命の努力が続いている.何よりも懸念材料であった検査羽数は,順調に推移していることである.会員にはブロイラーの消費に協力してもらうよう要請している.しかし,鶏肉嫌いの検査員がいることは驚きであった.
 全国第4位の食鳥肉供給県であることを考慮し,食鳥肉の安心,安全による安定した供給体制を堅持していくため,ネットワークを張り巡らして食鳥検査技術の向上ならびに検査業務の円滑な推進を図って,食鳥肉衛生の向上に万全を期する所存である.
 本事業の円滑な推進は,本会の歴史的な事業である狂犬病予防事業あるいは現代的な動物愛護に関する事業等の展開に大きく貢献するものであり,青森県獣医師会の活性化が図られるものと考えている.しかし,緒に就いたばかりであり軌道に乗せるには全国食鳥指定検査機関協議会会員の一層のご支援を期待したい.また,岩手県獣医師会には,これまで一方ならぬご厚情にあずかり,心から感謝申し上げるとともに,今後なお一層のご指導ご支援をお願い申し上げる次第である.